田舎暮らしを夢見る人へ
 田舎に憧れる人が増えている。高度成長期を経て日本は近代化し人々は経済的なゆとりを手に入れた。それに伴いたくさんのものを失ったのではないかと思う。お金と引き換えに精神的なゆとりというものは押し潰され、お金を生み出さないものは全て余計なものとなった。今、それが変わりつつある。人間らしい生活を、自分の時間をたっぷり持てる生活を望むようになった。よく考えれば当たり前の事だとは思うけれど。そこで都会から田舎に住むようになった一人の人間として、田舎の良い点や悪い点を書いてみたいと思う。

まず良い点。
1.空気が美味しく、水が美味しく、いつも美しい大自然の中でのんびり暮らせる事
 これは誰しもわかっているだろうし今更説明するまでもないが、でも田舎暮らしをする上で最も魅力的な部分だと思う。毎日毎日心がリフレッシュされていつも穏やかな気持ちになれる。朝太陽が地平線から昇り、そして夕方太陽が地平線に沈んでいく。当たり前の事が当たり前で感動するし、毎日見える風景が違うのだ。日の出と共に色鮮やかな美しき風景が浮かび上がり、そしてまた赤く染まりながら闇に包まれていく。都会から来た人が最も驚くのは夜だろう。満月の夜は人工的な明かりなどまったく必要がないくらい明るく、本当に月明かりで本が読める。雪があれば反射してさらに明るくなり、馬に乗ったり作業をしたりするのも何不自由がないくらいで、幻想的な景色となる。月が欠けている時は星空が美しく、まさに星を散りばめたという感じで、見上げていると夜空に吸い込まれそうになる。日中は天気の良い日は外に出たい気持ちを抑える事ができないだろう。何かをするという目的が特になくても、外に出て空気を吸い散歩でもしたくなるはずだ。そして日々の移り変わりだけでなく、四季の移り変わりも肌で感じ、それぞれが魅力的なのだ。春は雪が解けてあらゆる動植物が活動を開始し始め、生命のエネルギーを感じる事が出来る。夏は全てが燃え上がるかのような熱気に包まれ、太陽の輝きとまさに緑の世界。秋は赤や黄色に染まる紅葉がとても美しく、どことなく物悲しい雰囲気は自分を見つめなおしたくなる。冬は雪の白と静寂に包まれるモノトーンな世界となり、ダイヤモンドダストや樹氷など全てが神秘的で輝いている。
2.隣近所に気を使う事無く、音楽を聴いたり動物を飼ったりできる
 都会のマンション暮らしからすればこれは天国だろう。家で音楽を聴くだけでなく、外でも音楽をかけて庭仕事などをするのは結構楽しい。そして動物を飼えるというのは衣食住全てに潤いをもたせてくれる。馬、羊、鶏、犬、猫、まさになんでもあり。
3.生活していくのにお金がかからない
 意外とこの利点は大きい。山菜やきのこを採ったり、畑から作物を収穫したりするのはもちろん、田舎暮らしをすると自然に早寝早起きとなって電気代がかからない。冬の暖も薪ストーブなら努力次第でコストは限りなくゼロに近くなる。水が美味しいから飲物は買わなくなるし、もちろん食べ物も美味しいから惣菜や弁当などは買わなくなる。ストーブから出てくる灰は馬や鶏の糞と混ぜて畑の堆肥となるし、たくさんの作物を育ててくれる。それらの作物のほかに、鶏から卵や肉、羊から羊毛や肉や羊乳などの産物を手に入れる。それらを食べた後の人間の残飯は鶏など動物の餌となる。全てが循環して、ただコストが下がるだけでなく相乗効果が得られ、おまけに環境に優しいというわけ。
4.時間を持て余すことがなく、やりたい事がどんどん出てくる
 田舎に暮らし始めると本能が目覚めるのか、アウトドア的な趣味が増え、乗馬、庭いじり、川遊び、山登り、自然観賞などを楽しむようになり、さらに狩猟、農耕などにまで手を出し始めるようになる。自分の時間がいくらあっても足りず、フレックスタイムで仕事がしたくなり、1日48時間あればいいのにと本気で思うようになるはず。
5.人間らしい生活が出来る
 田舎で暮らし始めると「生きる」という事を真剣に考えられるようになるし、視野が広くなる。

そして悪い点。
1.車がないと何も出来ない
 田舎になると鉄道やバスが通っていない事が多々あるし、北海道は特に車社会で、どこへ行くにも車を使う。便利といえば便利だけれど、歩く機会は本当に少ない。
2.仕事について
 普通のサラリーマンであれば会社はもちろん市街にあるわけで、田舎は郊外なのだから、必然的に通勤に時間がかかる。でも自分の事を言えば、通勤に要する時間は車で片道10分程度なのであてはまらないが。北海道でも人口が20万人を超えてくると、都市部が大きすぎて郊外に出るのに時間がかかるため、便利に田舎暮らしをしたいなら人口10万人以下の都市周辺の田舎物件がおすすめかもしれない。まあこれについては東京などの大都会と比べれば遥かに通勤時間は短くてすむので問題にはならないかもしれないが。東京などでラッシュアワーの通勤電車に片道2時間などという話を聞くとぞっとする。片道2時間という事は往復で4時間、年間300日働いたとして1200時間、30年間働いたら36000時間。これは1500日に相当し、丸々4年間もの時間をただ通勤のために費やしている事になる。何という時間の無駄使い。東京などで住んでいる人がこちらに来れば、逆に通勤時間が遥かに短くてすむメリットとなるだろう。さらに、田舎に移住したいけれど仕事がないという人がいる。でも選ばなければ仕事は何でもあるわけで、考え方を変えて、仕事に生きるのではなく余暇を生きるとというのも一つの手だと思う。都市部では生きがいを見つけづらく仕事が生きがいになってしまうだろうけど、田舎ではやりたい事がたくさん出てくる。仕事はあくまで最低限のお金を得る手段と割り切り、それ以外を楽しめばそれはそれでいいのではないか。もちろん仕事が自分のやりたい事であるならなおいいし、自宅にいながら出来る仕事が田舎暮らしでは最高の生き方だろうけど。それはとりあえず移住してから目指しても悪くはない。
3.新聞が新聞でなくなる
 田舎に住むと新聞配達が来ない。新聞は郵便で来るので、前日の夕刊と当日の朝刊がお昼頃にやってくる。日中仕事をしていれば、それを見るのは夕方となってしまい、すでに新聞ではなく古新聞なのだ。しかもなぜか必ず朝刊と夕刊をセットで契約しなければならず、どうしても理解できない。というわけで我家では新聞は取らなくなった。そのかわりインターネットが普及しているこのご時世では新聞ももはや必要ないのかもしれない。ニュースもテレビ番組表も全てインターネットから手に入れている。
4.買い物について
 日用品や食料品を買うのにはまったく不便はしないけれど、変わった物は大都市に行かないと手に入らない。そういう面で不便だが、これもインターネットで解消してしまった。インターネットでは探したいものをより安く簡単に見つける事が出来る。田舎で暮らしながらさらに便利さまで追求したいというのなら、インターネットは必需となる。情報、通信、売買、全てにおいて大活躍だ。
5.虫はお友達?
 虫が嫌いだという人は多い。自分自身虫は好きではない。でも人間は適応能力に優れているのか、ある程度なら慣れる事が出来る。高気密住宅ならそういった虫に悩まされる事はないだろうけど、我家のようなログハウスや古い住宅ともなると、虫とお友達にならざるを得ない。家の中で多いのはテントウムシとハサミムシ?。初めはいちいち気にしていたが、最近はどうでもよくなってしまった。そして夏の暑い季節になって、山菜採りや釣りなどで山野を歩いているとダニにくわれる。くわれると血を吸ってお腹がいっぱいになるまではなれない。無理に取ると頭が皮膚に残ってしまうので、うまくピンセットなどで取るか、熱を近づけたりハッカスプレーをしたりして対処している。自然の中で暮らすという事はこういうものだという認識があれば何とかなる。でも俺は都会のゴキブリやクモの方がよっぽど嫌だけれど。

 まあ田舎暮らしについて色々思いつく事を書いてみたけれど、最終的には実際に田舎に来て暮らしてみないと良さも悪さもわからない。移住を考えているなら、季節によっても違うので、春夏秋冬何日かずつでもファームインなどをしてみてはどうだろうか?やっていけそうだと思えば、仕事や住む場所探しをすればいいだろうし、田舎の町村は役場に行けば積極的にそういった事を斡旋してくれるところもある。いきなり土地を買って家を建ててしまうよりは、とりあえず借りて住んでみる事。その間に理想とする土地を探せばいい。土地探しに妥協してはいけない。役場や不動産屋を活用するのはもちろん、実際に車で色んな場所へ行ってみて、目ぼしい場所を見つけたら住所を調べ、法務局へ行って所有者を調べて直接交渉する手段もある。そして田舎物件には家を建てられない土地もあるので気をつけてほしい。道路に面していること、農地や農業振興地域に指定されていない事(指定されていれば除外をした上で)、北海道などであれば冬の除雪体制をチェックしておいた方がいい。我が根室支庁管内のように酪農が基幹産業であれば、集乳道路は朝一番に除雪してくれる。これは大きなメリットなのだ。畑作だとか稲作なら秋の収穫が終わればもう関係ないが、酪農は年中無休で牛乳を搾っているため、冬であろうと大雪であろうと毎日集乳しなければならない。という事はそういう集乳路線に面しているだけで勝手に除雪してくれるわけで、そういう意味では道東、特にここ根室支庁管内はおすすめかもしれない。たかが除雪と思うなかれ。大自然を甘く見てはいけない。恵みをもたらすのも自然であるなら、被害をもたらすのもまた自然なのだから。そういった事も含めてとりあえず住んでみないとわからない。もちろん事前の下調べはインターネットなどで出来るので、最大限に活用すること。気候条件、土地条件、交通条件、そして自然条件などを大体何となくでもいいからイメージとして掴み、自分が理想だと思えるような場所を何箇所かピックアップして実際に訪れてみること。田舎に暮らしてみたいと何となく思っていても絶対実現はしません。例え今すぐではなく将来的にと思っていたとしても、その時期が来てすぐに移住できるよう準備しておいても損はないはず。まずは行動あるのみ!

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